全全角

見た夢のメモとか起きてる時の寝言とか

前見た夢 エキゾチック軍師

軍師巡業で海に囲まれた漁業の国に来た。そこで聡明で美しい女性と出会う。原住民特有のコーヒー色の肌をしたその女性は大臣の娘らしい。妙齢だが結婚する気は無いらしく、国の人々の為に忙しく働き、国民からは親しまれていた。父の大臣は頭が固いバイキング気質だが、非常に尊敬していると語る。国に砕身してきた父の言うことは絶対に正しいと会話の陰に心酔ぶりが見えていた。
仕事でその大臣にお目通り叶うが、勇猛で威厳のある巨躯はともかく考え方は年季が入りすぎ、この平和ぼけた南国が戦争にでもなったらまず勝てないだろうなあとぼんやり思う。
娘とは親しくなっていく。この国の買い物といえば漁港の市場だ。浜辺一帯が出店で並び、朝水揚げされた魚も輸入穀物も庭で採った果物も全部ここで売る。娘に案内されながら深海魚やイガイガした謎フルーツを見ていると、出店の主人が遠くの海を見て、船だ、と呟く。また新しい商品を積んだ船でも来たのかと振り返ってみると、心臓が止まる思いをした。職業柄すぐ分かった。軍艦だと。

タクシーも無い国なので走って王宮に向かうと娘も後を追う。「どうされました」「王宮はどちらですか」「私の家です。元来た道を」「あなたは市場の人を浜辺から遠ざけて。あれは軍艦です」「まさか」「体力が無いのであまり喋りたくないです」「分かりました」娘はすぐ方向を変え走り去った。

王宮、大臣の間では海が一望できる。あれは戦争する気満々の軍隊である事、この国の兵力では勝ち目が無い事、よければ自分が中継ぎする事を提案申し上げるが、大臣は「戦支度せよ」と一言を発し、あとは下がらせた。
夜。軍艦は海の向こうで静まり、こちらは浜辺で兵士達の士気高揚の宴が催されている。民族的な音楽、雄叫び、笑い声の喧騒は国民までは届いていない。娘があの後浜辺の住民を全て内地に避難させたらしい。出店で生活する人々を移動せしめるとはよほど娘は国民に好かれ信頼されていると自分で頼んでおいて呆気にとられた。
大臣は周りの忠告に全く耳を貸さない。臣下を諭しても大臣がこれでは手の打ちようが無く、娘になんとか父上に思い止まるよう言ってくれと頼む。娘は賢そうな顔を歪めて、悲しそうに、それはできないと言う。「父は生まれた瞬間からこの国の為働いております。自国の軍師でもないあなたの口出しを受け入れろと」「親子揃って石頭だ。もっと聡明な人かと思ったのに」「役目じゃない事を買って出て、あなたこそどういうおつもり」言い返せない軍師は娘と喧嘩別れしたまま自室へ戻った。宴の音は聞こえない。

場面が飛んで浜辺で一度戦闘が行われた後。テレビを点けると娘が映っている。「国民の皆様ご視聴ありがとうございます。本日の為替相場中継は大臣の間ではなく旧法廷の間からお送りしております。」海が見える大臣の間では人々に不安を与えてしまう為の配慮らしい。娘の笑顔は明るいが法廷の円柱の檻が物騒で、父に囚われた娘に合った演出だと思った。
真面目づらで為替ニュースを読み上げる娘を見ながらぼんやり、市場を周りながら見せた明るい笑顔、避難指示を理解した時の真剣な表情、父を批判された時の悲しそうな顔を思い出す。すると急速に腹が立ってきた。黒目の大きな眼はいつも純粋で、そこがすごくかわいかったのだ。
私は君が好きなんだ死んでほしくない悲しそうな顔をしないでほしい女子アナみたいな笑顔をしないでほしい、父が何だ俺より大事かだから結婚できないんだと中継中に法廷に出向きまくし立てた。その後どうなったか覚えてない。不敬で殺されると思ったが、目覚めた時、娘が私の手を持って大きな黒目をうるませて笑っていた。
戦争が終わって市場も次第に賑わいを取り戻した頃、地元宝石商の出店に軍師の姿があった。「軍師殿、この国の既婚女性は証にピアスをする為、指輪よりそちらが売れ筋です」と宝石商が話す。結局ありふれた真珠のピアスを選ぶ。お手伝いの男の子が「大臣のねえちゃんをよろしくな」とぶっきらぼうに言った。